レモンバーベナ 日々是一杯

夏にレモンバーベナを飲まないなんて、もったいない、とひとり思う。

昨日、東遊園地のボランティアガーデンで育ったレモンバーベナを、作業のご褒美にいただいた。
強い陽射しにも負けず、ぐんぐん伸びたレモンバーベナは、だいぶ花を咲かせていた。

この日は、花穂を摘み、太くなった枝を落とした。花を咲かせたままにしておくと、葉が固く、苦くなるからだ。
どんどんとハサミを入れていくと、レモンよりもレモンらしい香りが漂う。

ひとり、またひとりと、その香りに引き寄せられてくるのが面白くて、摘んだ花穂を手渡す。

目をつむって香りを嗅ぐ、その幸せそうな様子を見ていると、ここ最近ずっと抱えていた、どうしようもない疲れや悩みまで、すうっと消えていく。

南米から持ち帰ったこの草が、欧州の人々をどれほど驚かせ、魅了したのか。いまなら、少し分かる気がする。

切った枝は急速に乾燥するので、葉を丁寧にはずし、まずは生のまま氷水に入れて楽しむ。
タイムリミットは、冷蔵庫で一日。
余った葉は、できるだけ光を避けて室内で乾かす。



たっぷりの葉に、たっぷりのお湯。
立ち上る湯気の香りは、生葉ほど鮮烈ではない。けれど、今度はハーブティーらしさが増して、二度楽しい。

長く置くと、黄金色に輝く水色になる。
それを眺めて、少しぬるくなったところを、ごくごくと飲む。

レモンバーベナを飲んでいる自分を、好きになる。

南米生まれのこの植物が、猛暑のうらめしさを、少しだけやわらげてくれている。

レモンバーベナ

学名:Aloysia citrodora Paláu 
   Aloysia triphylla
   Lippia citriodora
科名:クマツヅラ科
原産地:南米 特にボリビア南部からアルゼンチン北西部
使用部位:葉
別名:ベルベーヌ、ヴェルヴェーヌ
芳香成分:シトラール(ネラール、ゲラニアール)、ネロール、ゲラニオールなど
非揮発性成分:フェニルエタノイド配糖体(ベルバスコシドなど)

シトラールの含有量が高く、レモンよりも強いレモン様の香りを持つ。
ベルバスコシドは、抗酸化、抗炎症、鎮静、睡眠の質の改善などに役立つ。

シトラールは酸化しやすく、揮発で失われやすいため、香りが良いものを選ぶ。
ベルバスコシドなどのポリフェノール類は、急激に酸化するため、渋味がなく、茶葉が美しい色のものを選ぶ。

【歴史と儀礼と文化】
verbenaはプリニウスの『博物誌』に、ユピテルの卓を掃き清めるとありますが、そのために、古代ローマで「清めの草」という名前の由来が語られますが、それはクマツヅラ科全体に対してと考えられます。
別の資料になりますが、古代ローマには、「フェティア神官(フェティアル)」という神官団があり、外交や戦争などにおいて、重要な国家儀礼を担当しました。そのフェティア神官がクマツヅラを携えていたと読み取れる記述があります。
しかし、レモンバーベナは南米原産です。欧州へ入ってきた時期ははっきりしませんが、スペインによってインカ帝国が滅ぼされた17世紀以降の可能性が高いと考えられます。フランスで「ベルベーヌ」が流行したのもかなり後なので、verbenaという属名の由来である古代ローマの「清めの草」と、このレモンバーベナは区別して考えたいと思います。

【今日の飲み方】

生葉で
葉を枝からはずし、軽く洗って氷水へ。
香りのよいうちに、冷蔵庫で一日を目安に使い切ります。

生葉を乾燥させる
光を避け、風通しのよい室内で乾燥。
湿度は40~50%、室温25度以下にすると、カビの心配もなく、劣化しにくい。
葉が重ならないように広げます。
3-4時間で半生、6-8時間で完全乾燥。

乾燥葉で
たっぷり2g 熱湯100~98℃を200ml
10-15分抽出する
香りを保つために蓋をする

石橋志保


CARACAROフィトテラピースクール代表
植物療法講師/ハーブ専門家
植物文化・死生学・ライフデザイン研究家

神戸を拠点に、伝統的なハーブ療法に、現代の成分化学、生化学、分子生物学などのサイエンスの観点を取り入れ、エビデンスベースなハーブ・アロマテラピーを展開。キャリア30年以上のプロ養成スクールを運営・指導。フィトケミカルや植物辞典など植物の科学と文化を幅広く発信。

植物と宗教・民俗、 死生観・ライフデザインをテーマに、講座やワークショップの企画運営、 講演・執筆活動を行う。

幼少から植物栽培、発酵・歴史・文化・宗教・民俗が大好物。修士(人間学)専攻は人間社会学、専門は死生学(災禍の儀礼、祈り、悲嘆ケア・グリーフケア)。神話・宗教・芸術と植物から、人が植物に託した思いを紐解き、祈りや儀礼とともにトランジションをデザインする「ハーベストライフ」を提唱、執筆講演活動中。

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