こんな季節に雷なんて。
空は真っ黒な冬空なのに、まるで晩夏の夕立の前のような、生ぬるく湿った空気が漂っている。
遠くで鈍く空が光る。
少し遅れて轟きが響く。
かぶせるように、どすんという地響きのような音が、窓の外の空気をびりびりと震わせた。
これは近くに落ちたな。
ベランダの向こうに滲む夜景を、ちらりと見やる。
青く光った分厚い雲が、夜の町を低く覆っている。
PCモニタの中で光り続けるタスクを諦めて、改めて雷雲を眺めると、それは山のほうへゆっくりと流れていた。
そういえば、雷が落ちたところにはキノコが生える、と聞いたことがある。
空気中の窒素が放電によって窒素酸化物になり、雨に溶けて大地に降り注ぐ。
それが土壌に染み込み、植物やキノコの生長をうながすのだという。
雷という激しい現象も、地上の生命にとっては、栄養をもたらす出来事のひとつなのだ。
梅雨明けの雷も、夏の終わりの雷も、植物の生長には欠かせない。
そう思うと、この重たい雲の中で鈍く光る雷光も、どこか静かな意味を持っているように見えてくる。
落雷のあと、土の下ではきっと、見えない変化が始まっている。
しばらくして雨が止み、空気が入れ替わるころ、湿った森の土の上に、小さなキノコが顔を出す。
あの強い光と音のあとに、こんな静かな命の気配が生まれるのだと思うと、自然の循環というものの複雑さに、少し目眩がする。
雷の夜のあと、 大地は少しだけ豊かになっている。
視線をもどすと、 私の成長を促すはずのタスクが、まだモニタの上で光っている。
落雷のあとのキノコのように

