カンファーとケトンの覚醒作用の違い:精油使い分けノート

アロマテラピーの学習では、まず「成分グループ(官能基)」ごとの特性を学ぶことから始まります。 「ケトン類は刺激活性や覚醒作用、通経作用がある」といったグループとしての共通項は、植物化学の基礎となる重要な地図です。

そこからクライアントワークを行うには、成分「単体」の個性と働きへ視座を深める必要があります。

同じケトン類であっても、成分ひとつひとつの作用機序を理解し、クライアントの症状に合わせて「選ぶ」こと。 今回は、ローズマリーの主要成分であるカンファーを例に、その覚醒メカニズムと選択の視点について解説します。

作用機序と成分特性

ローズマリーの覚醒作用を語る上で、主要成分であるケトン類、特に「カンファー(Camphor)」の働きは無視できません。既存の研究データからは、カンファーによる覚醒メカニズムとして以下の経路が示唆されています。

dーカンファー

①嗅覚からの中枢活性(1,8-シネオール・α-ピネンなど)
②カンファー等によるイオンチャネル調節を含む神経興奮性の変化(冷静性も含む)
③循環・血流改善を通じた脳機能サポート

脳の覚醒だけではなく、からだも血流増加など交感神経優位の状態が見られます。全身の血流を増加して、血行促進・脳血流増加により覚醒・注意力アップが見込めます。神経細胞への働きとしては、冷静に。混乱したり焦ったりしているときに、スーッとクールダウンするイメージです。

カンファーを含む代表的な植物:ローズマリー(Salvia rosmarinus/Rosmarinus officinalis
カンファー量はケモタイプによる差が大きい

【類似成分との比較:ツヨン】

ではヨモギやセージに含まれる「ツヨン(Thujone)」の働きはどうでしょうか?

αーツヨン

①GABAa受容体をブロックするアンタゴニスト
②セロトニン作動系の興奮性伝達を変化させる
③ニコチン性アセチルコリン受容体も阻害する


ツヨンの覚醒作用は、目を覚ます・元気にしてくれるというより、「リラックスできなくする」タイプです。ぼんやり感や眠気を吹き飛ばす力強さです。しかし、「休もう」とするブレーキを壊してしまうタイプとも言えますので、非常に鋭く強力です。カフェインのかなりハイレベルな上位互換です。結合する受容体がもっと強力で、それが神経毒性へとつながり、用量には厳格な管理が求められます。

ツヨンを含む代表的な植物:セージ(Salvia officinalis
ホワイトセージ(Salvia apiana)などツヨンよりも1,8-シネオールとカンファーが主成分の種もある。

【CARACARO流:クライアントワークの実際】

カンファーとツヨンは、共に強力な覚醒作用を持つケトン類ですが、その「強度の違い」や「代謝のリスク」を理解せずして、クライアントに提案することはできません。

比較的マイルドなカンファーを選ぶとしても、ローズマリーではケモタイプの違い、さらにスパイクラベンダーなども加えると、全体としての働きには大きな違いがあります。香りの印象はもちろんです。

単に「目が覚める精油」として選ぶのではなく、
「クライアントが抱える問題の本質」
なぜ覚醒・集中力UPしたいのか?
根本的な解決が必要なのか?一時的な補助で良いのか?

②「クライアントの体質」「禁忌事項・注意事項」
血圧や体力、入眠や睡眠のトラブルなどに問題はないか?
ほかのケアや飲食物、投薬との重複・拮抗はないか?

「求められる覚醒の質」×「成分の薬理機序」
ここが上記の カンファーとツヨンの違い に当たります。

④「精油としての全体性」
カンファーやツヨンを含みながら、精油全体としての働きが、クライアントの体質や希望に合っているか?
使用のタイミング、TPOに合っている?
強すぎたら使用量やブレンドで、作用を調節する

これらを掛け合わせて精油を選定し、最適濃度にブレンディングすること。
このオーダーメイドな作業がアロマテラピーの醍醐味でもありますし、セラピストに求められる高度な技術です。
精油には「香りの強さ」の違いがあるので、ブレンディングには、あらかじめブレンドファクターでアコードをとっておくと便利です。

会員向け動画では

カンファーとツヨンの作用の違いを踏まえて、
具体的なクライアントワークとして、どのようなクライアントにどのように使用するかを解説します。

●「覚醒」「集中」を求めるクライアント
● 別の主訴から紐解いて、カンファー、ツヨンにたどり着くクライアント
● カンファー、ツヨンを含む精油から、どのクライアントにどの精油を選択するか
などのケースワークを簡単に紹介しています。

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石橋志保

CARACAROフィトテラピースクール 代表
エステティシャン、アロマセラピスト、植物療法 講師
30年以上の講師&クライアントワークのキャリアを土台に、講師・セラピスト向けに、エビデンスベースの精油・植物成分の情報と、カウンセリング・アドバイスなどの実際についてレクチャー。幼少から植物栽培、発酵・歴史・文化・宗教・民俗が大好物。大学院での専攻は人間社会学、専門は死生学(災害、儀礼、悲嘆ケア)

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この記事を書いた人

神戸三宮にあるフィトテラピースクール&サロンCARA-CAROです!