先日、チンキについて書いた時に、
グリセリン置換や蒸留などでアルコールを取り除けたとしても、 同時に成分劣化があるため、
健康効果を期待して飲むにはおすすめできないなと考えています。
と、書きました。
生徒さまから早速「グリセリンはどのような劣化をするのですか?」とご質問がありました。
グリセリンの劣化は含まれる不純物によって決まります。
原料と製造方法
・植物や動物の油脂を加水分解する(石鹸などの生産の際の副産物)
・石油クラッキングの副産物プロピレンから化学合成する
代表的なグリセリンは植物原料ですが、合成も可能です。
グリセリンの濃度
・日本薬局方グリセリン80%程度
・食品添加物のグリセリン80%~90%程度
・医薬品用グリセリン95%以上
グリセリンの純度を高める
グリセリンには、多数の不純物が含まれるため、
精製(アルカリ処理、イオン交換)と蒸留によって高純度にしていきます。
不純物が多い場合は焼却処理して利用しないこともあります。
グリセリンの劣化
含まれる不純物が多いとその不純物が劣化する
水分が多い(開封後の吸湿にも注意)と微生物が発生する
種類 | 原料 | 不純物について | 劣化 | 備考 |
---|---|---|---|---|
植物グリセリン | ヤシ油などの油脂 | 油脂や脂肪酸が混ざる | 蒸留やイオン交換樹脂を使うが完全に取り除くのは不可能純度が低いと劣化しやすい蒸留や加熱時の脂肪酸の劣化、アルカリ性に傾くと着色 | 販売されているほとんどがこちら純度がいろいろ |
合成グリセリン | 石油 | 純度が高く不純物は非常にわずか | 精製するとさらに純度が高まる劣化はほぼなし 加熱にも強い | 手に入りにくい |
グリセリンに関しては植物性がほとんどで、合成のものは手に入りにくいと思います。
また作用や刺激性は、植物性か合成かで違いはありませんが、
医療では不純物がNGなので高純度のものを使っているし、
加熱が必要な行程で使う場合は合成のようです(ただし高価だと聞いています)。
近年なら電子タバコのグリセリンが高濃度のものが人気です。
劣化予防
・純度高いものを選ぶ(ただし肌に使うときは適切に薄める)
・加熱しない
・油脂や水分を添加したら早めに使い切る
・吸湿性を考慮して、開封したら早めに使い切る
私も、開封後に長〜い間棚の中に忘れていたグリセリンが黄ばんでいたのを思い出します。
ネットで買った「植物性グリセリン」で純度は不明でした。
悪臭などはしませんでしたが、さすがに使わずそっと処理しました…
またウォッカで作ったチンキをグリセリンに置換するときに、異臭や悪臭がしたことがあります。
ウォッカの水分で変質したようです。
美容業の端くれとしては、
グリセリンは保湿剤としては決して優秀とは言えないのですが、
健康な皮膚にはあって当たり前のものですし、
劣化を防ぐのも難しくありませんから、
安全で使いやすい素材であることには間違いありません。
CARA-CARO 石橋